かつて女の子だった人たちへ

第6話




絆を伴いタクシーで到着したのは、都内の病院だ。
すでに処置は終わり、俊夫は病室で眠っていた。看護師がいるナースステーションに絆を預け、雪奈は診察室で医師に話を聞いた。

「狭心症の発作ですか」
「はい。ご本人から今までに発作の経験はないと伺いました。動脈硬化がもとで冠動脈が狭くなっています。二週間ほど入院していただき詳しい検査と薬物療法を平行していきます」

医師はつらつらと説明するが、雪奈は突然の夫の病と入院に気持ちがついていかない。

「あの、心臓ってことは命にかかわるような病気ですよね。夫は大丈夫なのでしょうか」
「冠動脈が完全に詰まってしまえば心筋梗塞を起こします。詳細は検査後になりますが、生活習慣病も関係する可能性があるので、食生活や生活のリズムを見直して動脈硬化をこれ以上進めないようにしていきたいですね」

今日明日にも命が危ないという状況ではないのだと知り、身体から力が抜けていくような安堵を覚えた。
病院から俊夫が救急車で運ばれたと聞いたときは、さすがに衝撃で泣きそうになったのだ。
もう興味がないと思っていても家族だ。絆もまだ小さいのに、突然病に倒れてほしくはない。

医師と話した後、病室に戻る前に対応をした看護師のひとりに尋ねてみた。
そうではないかと思っていたが、救急車に同乗した人がいるそうだ。
雪奈は病室に戻ると、俊夫の枕元に置かれたスマホを手にした。社用スマホの方には今日の昼頃に女性とやりとりした内容が残っている。
時間と場所を指定し合う内容と【早く会いたい】などのメッセージ。今日はこの女性とホテルに行っていたようだ。
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