かつて女の子だった人たちへ
(ホテルでセックス中に狭心症の発作って……。どうしようもない人)

雪奈は冷めた目で液晶を見つめ、迷うことなく彼女に電話をかけた。
数コールで電話は繋がった。

『迫田さん? 大丈夫? もう電話できるの?』

若々しい女性の声に、雪奈は低くはっきりと返した。

「迫田の妻です。まだお近くにいらっしゃるなら、病院に戻ってきてくださる?」

電話を切る隙も言い訳する隙も与えず、厳然と言い放った雪奈は、氷のように冷たい表情をしていた。


病室にサブベッドを用意してもらい、絆をそこで寝かせた。
雪奈はひとり、無人の薄暗い病院のロビーで女と対峙した。
女はモデルのよう……というより痩せすぎというほど細く骨ばっていた。明るい茶色にブリーチをした髪はぱさぱさで、化粧は目と涙袋を強調している。
二十代前半だろうか。服装はアジア系通販サイトで買いましたといったぺらぺらのもの。ボディラインがはっきり出るデザインだからこそ、彼女の細さが痛々しく見えた。ネックレスだけハイブランドのものだが、パパ活女子御用達のブランドである。おそらく俊夫か同じような“パパ”が買い与えたのだろう。
若い子らしいと言えばそうだが、とてもチープに見えた。

(もう少し品のいい女を相手にすればいいのに)

雪奈の知る限り、十数年前の芸能界志望の女子もラウンジ嬢も、身綺麗にしている女性が多かった。俊夫も雪奈の清楚で上品でありながら、洗練された美貌を好きになってくれたはず。
だからこそ、俊夫の浮気相手はそれなりのレベルの女性だと思っていたのだ。
目の前にいる彼女は若いだけでなんの魅力もない。
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