かつて女の子だった人たちへ
(浄化も大地のパワーも、何ひとつ絆を救っていない……!)

寂しい想いをさせ、友達にからかわれる要因となった。雪奈の行動の多くが、絆を不安にさせ、傷つけていた。
そして今もまた、自分が救われるために絆を巻き込もうとしている。
雪奈はドアノブを握り、勢いよく戸を開けた。絆が目を開け、涙にぬれた目でこちらを見た。

「絆!」

雪奈は駆け寄り、息子を抱きしめた。絆は顔周りだけ熱く、身体は冷え切っていた。

「絆、ごめんね。長いこと、ごめんね」

泣きながら謝る雪奈に、絆も顔をくしゃくしゃにして泣き出した。

「ママぁ……」

絆はいったいいつから我慢していたのだろう。
俊夫の浮気で雪奈が不安定になったときからだろうか。クレマチスの世界に傾倒し始めた頃からだろうか。友だちから雪奈のことで揶揄されるようになってからだろうか。
絆がいつも笑顔だったのは、様子が変わった雪奈を支えたかったからだ。寂しそうな雪奈を守りたかったからだ。学校で孤立しても、変らず通い続けたのも雪奈の日常を守るため。

(守るはずが守られてたんだ……)

雪奈は声の限りに泣いた。大人になってからこれほど泣いたことはない。悔恨で身も心も痛く、涙は止まらなかった。

「ごめんね、絆……ごめんね!」

ふたりは抱き合っていつまでも泣き続けた。子ども部屋にはゆっくりと夜が訪れ始めていた。

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