かつて女の子だった人たちへ
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梅雨真っただ中の六月だが、今日はよく晴れている。
雪奈は自分と絆の布団を二階のベランダの手すりに引っ掛けた。湿度も低いし、夕方までにふわふわになるだろう。
「ママー」
階下で絆が呼ぶ声がする。
「はあい。今行くねー」
雪奈は返事をし、絆とふたりで使っている和室のふすまを開けた。
約二ヶ月前、雪奈は俊夫と離婚した。現在は東京郊外の実家に身を寄せている。絆は実家近くの小学校で三年生に進級した。
『病を抱えた夫を捨てるなんて』
義母にはそう罵られたが、雪奈は無視した。
俊夫の浮気の証拠は山ほどある。浮気の慰謝料はいらないが、財産はきっちり分割。絆の養育費も一括でもらい、病気を理由に親権は放棄してもらった。俊夫はともかく、義母にこれ以上介入されたくなかったからだ。これらはすべて弁護士を通してやりとりし、多少費用はかかったが俊夫が素直に応じてくれたため、すんなり離婚が成立した。
「ママ、ごはん食べちゃってって、ばあばが」
階下に降りると、すでに朝食を済ませた絆が台所に自分の食器を下げている。台所で洗い物をしているのは雪奈の実母だ。絆が下げてきた食器を受け取り、「ありがとう」とにっこり笑っている。
離婚を決めたとき、まず荷物をまとめて絆と実家に転がり込んだ。両親は驚いたが、雪奈と絆を受け入れてくれた。
若い頃は過保護でうるさいと感じていた両親は、ただひたすらに雪奈を想ってくれていた。雪奈が絆を想うように。これからは両親に恩返しをしながら生きていきたいと考えている。
「絆、集金袋、確認してねー」
「ランドセルに入れたよー」
雪奈は手早く食事を済ませ、母に御礼を言って食器を下げた。父は小学校の通学路ボランティアを引き受けているので、すでに出かけている。
毎朝、じいじが見守ってくれるので安心と絆も嬉しそうだ。