かつて女の子だった人たちへ
雪奈は肌質に合うピンクベージュの口紅を塗り、よくなじませて顔を上げた。軽く髪にワックスをつける。長い間、ミディアムボブヘアだったが、最近もう少し短めのショートカットにした。絆には可愛いと褒められたし、新生活にはちょうどいいと気に入っている。
「よし、準備完了」
「ママ、時間だよー」
雪奈の声と玄関から絆が呼ぶ声が被る。
「はーい。お待たせ―」
「面接の会場、ちょっと遠いんでしょ。遅刻しないようにね」
「うん、気を付けるよ」
本日、雪奈は就職面接だ。職歴がほとんどないため苦戦していて、すでに二回落ちている。
リクルートスーツにパンプスといういでたちで絆と一緒に家を出た。
「今度こそ就職決めて来るからね!」
「うん、ママなら大丈夫だよ」
隣を歩く絆が勇気をくれる。
新しい学校に馴染み、友達も多くできたようだ。もちろん、環境が変わって無理をしている部分もあるだろう。それでもあの頃と比べて、絆はずいぶん柔らかく笑うようになった。
本来の子どもの笑顔になったように思う。
雪奈はもうクレマチスと連絡を取り合っていない。離婚を機にオンラインサロンを退会し、クレマチスに別れを告げた。
新生活で余裕がなくなるので、こういった活動を辞めると告げると、彼女はとても残念そうに頷いた。
『ユキナさんと私の運命は、今生ではこれまでだったのね。また来世で会いましょう』
最後の最後まで“いい人”だった。彼女は悪気なく雪奈を世界に取り込み、雪奈が自分の思う通りにはならないと理解したので穏便に手を離した。それだけだ。
「よし、準備完了」
「ママ、時間だよー」
雪奈の声と玄関から絆が呼ぶ声が被る。
「はーい。お待たせ―」
「面接の会場、ちょっと遠いんでしょ。遅刻しないようにね」
「うん、気を付けるよ」
本日、雪奈は就職面接だ。職歴がほとんどないため苦戦していて、すでに二回落ちている。
リクルートスーツにパンプスといういでたちで絆と一緒に家を出た。
「今度こそ就職決めて来るからね!」
「うん、ママなら大丈夫だよ」
隣を歩く絆が勇気をくれる。
新しい学校に馴染み、友達も多くできたようだ。もちろん、環境が変わって無理をしている部分もあるだろう。それでもあの頃と比べて、絆はずいぶん柔らかく笑うようになった。
本来の子どもの笑顔になったように思う。
雪奈はもうクレマチスと連絡を取り合っていない。離婚を機にオンラインサロンを退会し、クレマチスに別れを告げた。
新生活で余裕がなくなるので、こういった活動を辞めると告げると、彼女はとても残念そうに頷いた。
『ユキナさんと私の運命は、今生ではこれまでだったのね。また来世で会いましょう』
最後の最後まで“いい人”だった。彼女は悪気なく雪奈を世界に取り込み、雪奈が自分の思う通りにはならないと理解したので穏便に手を離した。それだけだ。