かつて女の子だった人たちへ
「レミー」
敬士が帰ってきた。一足先に引っ越し、荷ほどきも終わっている敬士は、食料の調達に出かけてくれたのだ。
敬士が買って帰ってきたのは、駅前にある弁当屋の弁当だった。庶民的な弁当に、少し拍子抜けする。
近くには高級スーパーもあるし、デリのお店もある。ワインを取り扱うおしゃれなお店だってあるし、パティスリーやベーカリーもある。それなのに全国に何百店舗もあるチェーンの弁当屋の弁当とは。今日は引っ越し初日なのに、ふたり暮らしを祝う気もないのだろうか。
「唐揚げとのり弁どっちにする? あ、ごめんな、引っ越しで金なくてさ」
令美の表情を見て、敬士が謝りつつ言い訳する。令美はわずかな落胆を呑み込んだ。
「しばらくは節約しなくちゃだもんね」
「そうそう、結婚式のために今から金貯めたいし」
結婚の言葉に令美は相好を崩した。なんだ、ちゃんと敬士は考えてくれているのだ。それなら脂っぽくて安っぽい弁当を買って帰ってきたことは許そう。
「ねえ、敬士」
食事をしながら、令美は切り出した。
「スマホのパスコードあるじゃない」
「ああ」
「お互いの、教えあっとこ?」
敬士が驚いた顔をし、それから苦笑いになる。
「え~? 必要あるかな~?」
「一緒に住むんだよ。お互いになにかあったときに、スマホを使って家族や会社に連絡しなくちゃならないじゃない」
「その辺に書いておけばいいじゃん」
令美は当然という顔で微笑む。
「別にお互い監視し合おうなんて言ってないよ。実際見る機会なんて来ないだろうし。でも、将来を誓った恋人同士なんだから、教えても問題ないでしょう?」
敬士は引きつった笑顔で頷くでもなく沈黙していた。
敬士が帰ってきた。一足先に引っ越し、荷ほどきも終わっている敬士は、食料の調達に出かけてくれたのだ。
敬士が買って帰ってきたのは、駅前にある弁当屋の弁当だった。庶民的な弁当に、少し拍子抜けする。
近くには高級スーパーもあるし、デリのお店もある。ワインを取り扱うおしゃれなお店だってあるし、パティスリーやベーカリーもある。それなのに全国に何百店舗もあるチェーンの弁当屋の弁当とは。今日は引っ越し初日なのに、ふたり暮らしを祝う気もないのだろうか。
「唐揚げとのり弁どっちにする? あ、ごめんな、引っ越しで金なくてさ」
令美の表情を見て、敬士が謝りつつ言い訳する。令美はわずかな落胆を呑み込んだ。
「しばらくは節約しなくちゃだもんね」
「そうそう、結婚式のために今から金貯めたいし」
結婚の言葉に令美は相好を崩した。なんだ、ちゃんと敬士は考えてくれているのだ。それなら脂っぽくて安っぽい弁当を買って帰ってきたことは許そう。
「ねえ、敬士」
食事をしながら、令美は切り出した。
「スマホのパスコードあるじゃない」
「ああ」
「お互いの、教えあっとこ?」
敬士が驚いた顔をし、それから苦笑いになる。
「え~? 必要あるかな~?」
「一緒に住むんだよ。お互いになにかあったときに、スマホを使って家族や会社に連絡しなくちゃならないじゃない」
「その辺に書いておけばいいじゃん」
令美は当然という顔で微笑む。
「別にお互い監視し合おうなんて言ってないよ。実際見る機会なんて来ないだろうし。でも、将来を誓った恋人同士なんだから、教えても問題ないでしょう?」
敬士は引きつった笑顔で頷くでもなく沈黙していた。