財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「……あはは」
私はついおかしくなって笑い出してしまった。お盆で顔を隠して口を押さえていたが、崇さんがジロッと睨んでる。まずい。
「どうして辰巳とあんな噂になるのか訳がわかりません。辰巳も、僕も、女性しか好きじゃない。辰巳の好きな人は香月がよく知っているらしいですよ」
「……はあ、ま、そうですけど。大学の先輩なのでお二人とも……。でもまだお付き合いはしていないと思います」
「辰巳君も哀れだな。いい年した男二人、イケメン同士だし、ふたりで婚活でもしたら?どう思う……香月さん」
専務がコーヒーを飲みながら意地悪な瞳をきらめかせた。また冗談だ。
「辰巳さんは別としても、崇さんの縁談は星が降るほどあると聞いています。この秘書課にもお相手の噂が……」
コーヒーカップをテーブルの上においた崇さんは、ガチャンと珍しく音を立てた。
「香月。それは噂でしかない。秘書室は噂話厳禁のはずだぞ」