財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
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とうとう崇さんが海外に行く日が近づいて来た。出発前日、彼が専務のところへお別れのご挨拶に来た。
私はいつものようにコーヒーを二つ入れて、部屋へ入った。
「専務お願いです!そんなことは言わないで下さい!辰巳を残してなんとかしますから……」
声を荒げる御曹司。私はびっくりして入り口で立ち止まった。そんな私を目の端で捕らえた日傘専務はコーヒーを運ぶよう手招きした。それに気づいた御曹司は振り向いて私を見た。
「崇君。彼女のコーヒーもしばらくおあずけだな」
「確かにそうですね。香月さん、コーヒーだけは入れるの上手ですからね」
私はむっとして彼の前に置きかけたコーヒーを持ったまま言った。
「すみません、コーヒーを入れるしかできなくて……」
崇さんは私の手からコーヒーカップを奪い取ると、こちらを見て一口飲んだ。