財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「水なんてあげられません。お茶かコーヒーなら今日みたいにあげられますけど……」
「そうじゃないんだよ。水をあげてほしい。肥料もたまにあげてね。そうしたら僕の蒔いた種から芽が出て花が咲く」
私にゆったりと笑いかける専務がそこにいた。その時は言っている意味が全くわからなかったが、忘れかけた頃になって、その意味に気づかされることとなる。
* * * *
御曹司がいなくなって二ヶ月。もうすぐ総会だ。
役員室のフロア周辺は物々しい雰囲気に包まれている。総会前はいつもそうだ。役員人事があり、駆け引きが始まっている。しかも御曹司がいないので、隠すことなく今年は口に出す人もいる。
秘書は知らぬフリを通している。怖くて情報収集もできないくらい、今年は状況が良くない。私は居心地が悪くて、ほとんど秘書室で過ごさなくなっていた。
四階に用事があって久しぶりに降りた。懐かしいフロアだ。