憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
「本当? 嘘じゃない?」
優しい声につい、泣きそうになる。
「仮に亜矢に何かあったとしても、俺は離れる気ないよ。元からそのくらいの覚悟はしてる。そのうえで一緒にいたいって思ってるんだから」
優しい和登さんは、私の脳に後遺症や合併症が残ったとしても一緒にいたいと思ってくれていた。そのうえで、私は一つお願い事を口にする。
「もし私に何かあったら以前お渡しした離婚届を提出してください。お願いします。それが和登さんへの最後のお願いです」
「うん、分かった。俺も亜矢への最後のお願いを言うけど、無事に手術が終わったら、ずっと一緒にいてもらうから。亜矢だけ俺へお願い事言うのは不公平」
和登さんは私のお願いを逆手に取るように、私にお願いを仕返してきた。
私も和登さんとずっと一緒にいたい。死にたくない。この会話が最後なんて思いたくない。
――和登さんに医者を辞めてほしくない。
「私の手術が終わってもずっとお医者さんでいてくださいね」
「……なんで?」
「辞めそうで、不安になっただけです。ここには羽倉先生を必要とする患者さんがたくさんいます。これからもお医者さんでいてください」
仁田先生から聞いた、とは、口が避けても言えないため、どうにか誤魔化す。
和登さんは「そんなに俺、辞めるって顔に出てた?」と、苦しそうに笑った。