先輩!

「俺もう行くわ。帰ってからちゃんと話そう」

苛立ちが隠せない声で先輩が言う。


「先輩、わたし、」

「いいって。ごめんな。朝の時間がない時に話すことじゃなかったな」


ジャケットとコートを着て、カバンを手に玄関へ向かう先輩を追いかける。

気持ちを上手く伝えられず、不快な思いをさせてしまった。


違うんです。ずっと一緒にいたいんです。

先輩のことが好きなんです。大好きなんです。

先輩は、すごくすごく大切な人なんです。

一生そばにいて欲しいんです。


そう言いたいのだけれど、急いでいる先輩を引き留められない。

先輩の言う通り、今夜ゆっくり話し合いたい。その時思いを伝えたい。


「弁当ありがとな。じゃあ」

「いってらっしゃい。気をつけてください」


いつものように笑顔で別れた先輩だけど、それが作り物だということはすぐわかった。



いってらっしゃいのキスが、出来なかった。



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