先輩!
「芽衣おいで」


2人きりになった瞬間、先輩の声色が変わった。優しくて温かみのある『翔くん』の声。

涙をハンカチで拭いながら、先輩の右側に立った。近くで見ると先輩の顔は傷と痣だらけで、改めて無事でよかったと安堵した。


「ごめんな、心配かけて。来てくれてありがとう」

点滴が刺さった右手で、わたしの手を握ってくれる。


「先輩」

「うん」

「せんぱぁい...」

「うん」

「先輩!!」


嗚咽混じりに手を握り返す。繋いだ手を引き寄せ、そっと抱きしめてくれた先輩。

病院着から覗く体が、ところどころ、赤や青に変色している。


「逢いたかった」

「わたしもです。心配で心配で、よかった、ほんとによかった」

「俺が助かったの奇跡らしいわ。タクシーから助け出してくれた救急隊の人が言ってた」


先輩がその時の様子を教えてくれた。
< 243 / 371 >

この作品をシェア

pagetop