先輩!



ホテルを出て、駅に続く地下街を玲央と2人、無言で歩く。足早に駅に向かう人々の流れから、完全に遅れながら。


もうすぐ、別れの時がやってくる。


営業時間外の店が途切れ、地上に通じる出入口の階段の前で、玲央が立ち止まった。

駅の改札は目の前だ。

人の笑い声や話し声、足音に紛れて、電車の発着時刻のアナウンスが聞こえる。


「芽衣」


階段側に一歩入った場所に引っ張られ、そのまま抱きしめられる。

突然のことにバランスを崩しよろめいて、玲央に身体を預けた形になった。


「俺いやだ。芽衣がほかの誰かと付き合うなんて気が狂いそう」

力強く抱きしめられて身動きが取れない。


「芽衣…」


頭の上ですすり泣く声がする。両手で玲央の胸を押し、顔を上げ、初めて、玲央の涙を見た。


長い付き合いの中、最後の最後で、やっと。
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