人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
2.
アーロンがさらわれたのは、おそらく王位継承の件だろう。アーロンがいなければ、カーティスがその権利に一番近い者となる。
昔から、アーロンかカーティスかと騒がれていたくらいだ。その騒ぎに混ざりたくなくて、騎士団に入団して権利をさっさと放棄しというのに。放棄したとしても、アーロンがいなくなればそれはまた別の話なのだ。
だから、ルシアの言葉にも一理ある。カーティスを王位につけたい者は、アーロンの命を狙うだろう。カイルよりもアーロンのほうが危ない。
ただ、カイルまで一緒にさらわれた理由がわからない。
公の場では誰も口にはしていないが、カイルがカーティスの子であると思っている者たちは多いはずなのに。
もしかして、カーティスをおびき出すため――
「私も治癒師ですから、少しでしたら魔法の心得もあります」
治癒師は魔法使いよりも上級術師である。少しどころではないだろう。だが、魔法の使えるルシアがいるのは心強い。
「お願いです、殿下……私にカイルを探させてください」
魔薬中毒の捜査にも、魔法使いたちは駆り出されているはずだ。治癒師が動いているのだから、魔法使いが関わっているなど想像が容易い。だが、こちらの人捜しにどれだけ人員を割けているかはわからない。そもそも、魔法の使える人間は貴重な存在。
「……わかった。全責任は俺がとる。ルシア、俺と一緒にカイルを探してほしい」
彼女の鈍色の瞳が、揺れ動く。
「はい。お願いします、カーティス殿下……」
問題はどうやってこの部屋から抜け出すかである。だが、カーティスは騎士団所属。
「騎士棟へいってくる。情報を提供してくる」
昔から、アーロンかカーティスかと騒がれていたくらいだ。その騒ぎに混ざりたくなくて、騎士団に入団して権利をさっさと放棄しというのに。放棄したとしても、アーロンがいなくなればそれはまた別の話なのだ。
だから、ルシアの言葉にも一理ある。カーティスを王位につけたい者は、アーロンの命を狙うだろう。カイルよりもアーロンのほうが危ない。
ただ、カイルまで一緒にさらわれた理由がわからない。
公の場では誰も口にはしていないが、カイルがカーティスの子であると思っている者たちは多いはずなのに。
もしかして、カーティスをおびき出すため――
「私も治癒師ですから、少しでしたら魔法の心得もあります」
治癒師は魔法使いよりも上級術師である。少しどころではないだろう。だが、魔法の使えるルシアがいるのは心強い。
「お願いです、殿下……私にカイルを探させてください」
魔薬中毒の捜査にも、魔法使いたちは駆り出されているはずだ。治癒師が動いているのだから、魔法使いが関わっているなど想像が容易い。だが、こちらの人捜しにどれだけ人員を割けているかはわからない。そもそも、魔法の使える人間は貴重な存在。
「……わかった。全責任は俺がとる。ルシア、俺と一緒にカイルを探してほしい」
彼女の鈍色の瞳が、揺れ動く。
「はい。お願いします、カーティス殿下……」
問題はどうやってこの部屋から抜け出すかである。だが、カーティスは騎士団所属。
「騎士棟へいってくる。情報を提供してくる」