愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
こうして顔合わせを済ませたあとは、すぐに結婚の準備に取りかかった。
エンリッチほどの大企業の御曹司ともなると招待客の数はかなりのものになる。挙式自体は限られた人だけを招待するが、披露宴は大きな会場を押さえて大々的に執り行う。二人の結婚式は二人のために行うのではない。二人が婚姻関係となること、ひいては、エンリッチと笹崎紡績との結びつきを披露することこそが目的なのだ。
だからこそ、雅の個人的な意見が尊重されるはずもなく、雅は結婚式のその日まで、ただただ求められることに応えていくだけだった。ごく一般的な家庭の人間であれば、自分の意見が取り入れられない結婚式に不満を抱きもするだろうが、むしろ雅には自分主導で進まないことがありがたかった。義母からあれこれと指摘を受けても、それすら雅にはありがたかった。ただ大人しく従うだけならば、失敗する恐れもなくなるのだから。
義母からはたくさんの指示を受ける一方、清隆とのコミュニケーションは恐ろしいくらいに発生しなかった。たいていは誰かを介してやり取りしており、結婚式までの日々も結婚式当日も、清隆との間には最低限の会話しかなかったのだ。
一年以上の月日をかけて、雅は清隆の肩書きには詳しくなっても、彼個人についてはよく知らないままだった。
エンリッチほどの大企業の御曹司ともなると招待客の数はかなりのものになる。挙式自体は限られた人だけを招待するが、披露宴は大きな会場を押さえて大々的に執り行う。二人の結婚式は二人のために行うのではない。二人が婚姻関係となること、ひいては、エンリッチと笹崎紡績との結びつきを披露することこそが目的なのだ。
だからこそ、雅の個人的な意見が尊重されるはずもなく、雅は結婚式のその日まで、ただただ求められることに応えていくだけだった。ごく一般的な家庭の人間であれば、自分の意見が取り入れられない結婚式に不満を抱きもするだろうが、むしろ雅には自分主導で進まないことがありがたかった。義母からあれこれと指摘を受けても、それすら雅にはありがたかった。ただ大人しく従うだけならば、失敗する恐れもなくなるのだから。
義母からはたくさんの指示を受ける一方、清隆とのコミュニケーションは恐ろしいくらいに発生しなかった。たいていは誰かを介してやり取りしており、結婚式までの日々も結婚式当日も、清隆との間には最低限の会話しかなかったのだ。
一年以上の月日をかけて、雅は清隆の肩書きには詳しくなっても、彼個人についてはよく知らないままだった。