愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
***

 披露宴を終えた雅と清隆は、加々美家お抱えの運転手によって二人の新居へと送り届けられた。都心にそびえるマンション。その一室が二人の新たな住居である。

 雅がこの家を訪れるのは三度目だ。一度目は新居について清隆から説明を受けるため、二度目は自身の持ち物を運んでもらうためと、そうあまり長い時間は滞在していなかった。しかし、今日からは毎日ここで暮らし、ここへと帰る。ここが雅の住処となるのだ。

 清隆と二人で家の中へ入れば、清隆は雅のほうへ振り返り、いつも通り淡々とした口調で語りかけてきた。

「事前に説明はしたから一人で問題ないな?」

 説明とは最初にこの家へ訪れたときのことを言っているのだろう。そのときに雅は一通りの説明を受けた。マンション自体のことから住居内部の構造に部屋割りの説明。家のことはすべてハウスキーパーに任せているということも教えられた。

 雅が家のことをする必要は一切なく、妻同伴の場に付き従うこと、夫人の集まりに応じること、それが雅に求められていることだった。

 雅が清隆の言葉に「はい」とだけ答えれば、清隆はいつかのようにほんの少しだけ口角を上げた。

「君は本当に物分かりがいいな。私はもう自室で休むから、もし何かあるなら明日以降にしてくれ。君も今日は疲れただろうから、早く休むといい」
「はい、ありがとうございます」

 清隆が自室へ入るのを見届けると、雅も同様に雅に与えられた自室へと移動した。
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