愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 誠一郎は清隆が電話をかけるとすぐに出てくれた。

『はい。笹崎誠一郎です』
『突然すまない。清隆だ』
『はい。姉さんのこと、ですよね?』

 誠一郎の含みを持たせたような言い方に、彼が何かを知っているのではないかという期待が湧いていく。

『何か知っているのか!?』
『はい』
『雅は!? 雅は無事なのか!?』
『無事ですから、落ち着いてください。姉は私の家にいます』

 雅の所在がわかると一気に体の力が抜けて、清隆はその場に座り込んで深く息をついた。

『そうか……そうか、よかった』

 雅が無事ならとにかくそれでいい。本当によかったと安心するが、すぐに別の不安がもたげる。誠一郎の家というとあのとんでもない父親のいる家なのではないかとそういう心配が湧いて出てきたのだ。

『いや、待て。家とはあの家にいるのか? 実家にいるということか?』
『ああ、違います。私が一人暮らしをしている家です。父はいませんから安心してください』
『そういうことか。それならばよかった』

 清隆は今度こそ心から安堵する。誠一郎の家という意味なら一番安心だ。清隆は落ち着きを取り戻して、次にすべきことへと思考を移した。
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