愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
『すまない、雅がいるなら代わってくれないだろうか? 雅と話がしたい』
『あー、今、眠っているんですよ。かなり疲れていたようで』
『そうか……ならばいい。そのまま寝かせてやってくれ』
『わかりました』

 すぐにでも雅と話がしたいが、雅を起こすようなことはしたくなかった。ここ最近はずっと調子が悪そうだったから、眠れているのならそのままにしてやりたかったのだ。

 清隆は雅と話をするのは明日に持ち越しだと気持ちを改め、今、清隆の疑問に答えてくれるであろう人物へと向き合うことにした。

『誠一郎くん。本当に申し訳ないのだが、私には雅がそこにいる理由がわからないんだ。もしも理由を知っているなら、私に教えてくれないだろうか?』
『はい。ただ、あなたにとってはかなり苦しい話になると思います。それでもちゃんと最後まで聞いてくださいますか?』
『ああ。もちろんだ』

 誠一郎の前置きからして、清隆にとって喜ばしくない何かがあるのだろうと思った。例えば、雅が清隆のもとから離れたがっているとかそういうことが思い浮かんだ。けれど、誠一郎から聞かされた話はそんな優しいものではなかった。誰よりも大事な雅を、自分の身内がひどく傷つけていただなんて、何よりも重く苦しい話だった。
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