愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
「雅!」

 振り返れば、そこにはずっとずっと雅が求めていた愛する清隆の姿があった。

「清隆さんっ」

 思わずその場に立ち上がれば、清隆はすぐさま雅のもとへ駆け寄り、自身の胸元へぐっと引き寄せてくれる。雅も清隆へ強く抱きついた。

「清隆。離れなさい。その女はあなたと別れて、浩二さんと結婚すると言っているのよ。あなたにはちゃんとふさわしい相手を見つけてきましたから、あなたはすぐにその女と離婚なさい。子も満足に作れないような女はさっさと捨てなさい」

 義母の言葉に雅がぴくりと体を跳ねらせれば、清隆は雅をより強く抱き寄せ、小さいけれど低く鋭い声で唸った。

「……ふざけるな。お前らの企みは全部わかっている。雅を傷つけてただで済むと思うなよ?」

 しっかりと抱き寄せられていて清隆の表情は見えないが、清隆が激しい怒りを携えているのがわかる。

 そんな清隆の横を誰かがすっと通って浩二の前に対峙する。清隆に負けず劣らずの長身であることはわかったが顔までは見えなかった。

 新たな登場人物は誰なのかと、その正体を確かめるべく清隆の胸元から顔を上げてそちらへ目を向ければ、そこにはこの中にいる誰よりも強い威厳を放つ人物が立っていた。
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