愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 エンリッチの社長で雅にとっては義父にあたる加々美善一。その人だ。彼の登場に皆が息を飲んでいる。

「浩二。失望したよ。複数の会社へ水増し請求をしていたな? その上、その罪を私に擦り付けようとは」
「なぜ、それをっ」

 浩二の反応で、義父の言っていることが事実なのだとわかる。義父が失脚するという話は、おそらくこの企みのことだったのだろう。だが、どうやら義父のほうが上手だったらしい。

「お前の味方など最初からどこにもいない。お前の秘書も滝田も私の信頼する部下だ。お前の不正を見逃すはずがないだろう?」
「くっ! 滝田、お前!」

 浩二は滝田のほうへ目線を向けて激しく睨んでいる。

 ここへ連れられてきたときに、滝田は雅に一声かけてくれていたが、今になってようやくその意味がわかった。滝田は最初から雅の味方だったのだろう。清隆たちが来るまで辛抱してくれと言いたかったに違いない。

 滝田への感謝の気持ちで雅が少し胸を温かくする中、義父による制裁は続く。
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