愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 義父はそれ以上は浩二に何かを言うことはなく、今度は雅の父のほうへと向かう。

「さて、笹崎さん。浩二と勝手に取引を始めようとしていましたね。あなたのところにも不正な金が流れていることはわかっていますよ? しかも、その取引に雅さんまで利用しようとした。雅さんはもう清隆と結婚しているはずなのですがね?」

 義父から語られたその内容に雅はショックを受ける。妊娠できない雅を浩二が拾うというその構図だけだと思っていたが、どうやら雅は金と引き換えにこの浩二に売られていたようだ。

 雅が別の家へ嫁いでなお、自分が父の所有物であったことに暗く重苦しい気持ちになる。

 雅のそんな心境を察してくれたのか、清隆はそっと雅の頭へ手を添えて優しく引き寄せてくれた。

 雅の前ではひどく独善的で威圧感たっぷりの父も、この義父の前では強く出られないらしい。父は小さく縮こまり、土下座までして許しを請おうとしている。

「……その、申し訳ございません。どうかお許しください」
「我々が信頼したのはあなたではないのです。誠一郎くんを信頼して業務提携を決めたのです。あなたが勝手をするならば、すべての取引をなかったことにいたします」
「そんなっ。それだけはご勘弁ください」
「では、今後のうちとの取引はすべて誠一郎くん主体で行ってください。あなたが勝手な真似をすれば、私はいつでも手を引きます」
「わかりました。すべて誠一郎に任せます」
「それから今後は雅さんと関わることもやめていただこう」
「……わかりました」

 義父が最後に提示した条件に雅が驚いていれば、義父は雅のほうへ振り向き、雅を安心させるように優しく笑ってくれた。清隆に似たその表情に、雅は少しだけときめく。そのときめきを清隆は感じ取ったのだろうか。雅を抱き寄せる腕にぐっと力が加わったから、今度は清隆の想いに胸をときめかせた。
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