愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 食事を終え、ホテルの部屋に移動すると雅は少しの緊張感を覚えていた。その緊張は入浴を終えて、ベッドに入ると最高潮に達する。

「雅、今日は君を抱いてもいいか?」
「はい」

 清隆の誘いに雅はしっかりと頷いた。

 新居に越してから今日まで、しばらくは雅の心身をしっかりと回復させる必要があるからと清隆は一度も雅を抱かなかったのだ。ただただその腕に雅を引き寄せ、抱きしめるだけだった。

 だから、きっと今日が触れ合いを再開する日だと思って、雅は緊張していたのだ。そして、実際にその通りになって、雅は緊張だけではなくて、このあとの展開に期待も抱いている。

「少し間が空いてしまったからな。怖かったり、つらかったりしたら教えてくれ」
「はい」

 清隆の触れる手はとてもとても優しくて、怖さなど微塵も感じない。むしろもっと触れてほしくてもどかしくなる。

 しかし、今日の清隆はやけに丁寧で、雅はずっと焦らされ続けてもう気が狂ってしまいそうなくらいだ。

 雅が甘い声で「清隆さん」と彼を求めれば、清隆はようやく先へ進もうとしてくれるが、彼が取り出したあるものに雅は凍り付いてしまう。
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