愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 それからの二人はまるで付き合いたての恋人のような甘い時間を過ごしていった。

 日々のスキンシップは当然のこと、愛の囁きも忘れない。もちろん夜には甘くて濃密な時間を過ごした。

 そんな日々が続けば、雅の心はまたとないほど満たされていき、同時に大きな望みを抱いていく。

 その望みはどんどんと強くなり、一ヶ月ほどの時が経った頃、雅はとうとうその大きな望みを口にする。

「清隆さん。あなたとの子供が欲しいです。お願いします。もう使わないでください」

 雅は避妊具を取り出した清隆の手を制する。

「本当に望んでいるのか?」
「はい。愛する清隆さんとの子供が欲しいんです」

 清隆を真っ直ぐに見つめながら訴えかければ、清隆はふっと表情を緩めて笑ってくれた。

「わかった。私も雅との子が欲しい。君に似たかわいい子が」
「私は清隆さん似の子供が欲しいです」
「はは、そうか。では、君似の子と私似の子、少なくとも二人は作らないといけないな」

 清隆の台詞に雅は驚く。だって、清隆は最初に二人までしか作らないと言っていた。だが、今の言い方だとそれ以上も望んでいるように聞こえる。

「雅、君は何人欲しい?」

 清隆がその質問を口にするということは、もう最初の約束は気にしなくていいということだろう。

 過去の雅であれば、こういうときは清隆の意見に合わせるだけであるが、今の雅は思うままを口にできる。

 雅はとてもとても贅沢な回答を返した。

「欲しいと思えるだけ」
「そうか。では、欲しいと思えるだけ作ろう」

 ずっと欲していたものを与えてもらったような、深い充足感を得ていく。これまでにもう何度も体を重ねているはずなのに、この日はなぜだか今までで一番近くに清隆を感じられたような気がした。
< 172 / 177 >

この作品をシェア

pagetop