一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 中絶をするにしても、簡単にあきらめてしまっていいのか。それはどうなのかという思いと、自分がこの子をちゃんと育てられるのかという疑問に駆られてしまう。
 こういう時、誰かいてくれたらと思うのに、相談できそうな人はいない。成哉とは連絡先を交換できていないし、そもそも忙しいので連絡出来るかどうかもわからない。
 結論が出ないまま、数日程時間がたった。

「んっ」

 接客中、スイーツの匂いを嗅ぐとまた胃のむかむかがきつくなって少しえづいてしまう。しかも列の向こうには成哉が白衣を脱いでスクラブ姿で患者と共に並んでいるというのに。

(もしかして見られたか?)
「堀田さん、病院いったんでしょ?」
「はい。だいぶ時間はかかりそうで」
(うそついたけど仕方ない……)

 症状をこらえて接客をしている時だった。いきなり私の視界がぐるりと反時計回りに一周する。

「!」

 私は我慢できずにその場に倒れてしまった。視界が暗くなり、皆の声という声がぼんやりとしか聞こえなくなってしまう。

「ーー! ー!」
「た! ……!」

 こうしてゆっくりと目を開けると……気が付けばベッドの上にいた。視界にはカーテンのレールと白い天井が映り込む。

「た! 堀田!」
「藤堂くん……?」

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