一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 私の左側には成哉がスクラブ姿に白衣を着て、しゃがみこんで私の左手を大事そうに優しく握っていた。

「ごめん、俺のせいだ」

 そう重く暗い口調で謝罪する成哉。彼のこんな顔はこれまで見た事が無い。

「藤堂くん、顔をあげてよ」
「本当に申し訳ない!」

 成哉は私の手を握りながら、頭を下げる。そこまで謝罪されると、彼にどう言葉をかけてよいのかわからなくなってくる。

「責任は勿論取る。俺と結婚してくれないか?」
「へ」

 いきなりの結婚宣言に、私は思わず変な言葉が出た。結婚してほしいという事は、私のおなかにいる子供が成哉との子である事を彼は理解しているのは伝わった。

「いや、でも……」
(だめだ、彼に迷惑をかけるわけには)
「私の事は大丈夫。心配しなくていいから」
「いや、そんな事言われたら逆に心配する!」

 成哉の鬼気迫る目つきに私は完全に圧倒されていた。

(そんなに私の事を……)
「とりあえず、今日から俺と一緒に暮らさない?」
「えっ、いやいやいや!」
「とりあえず1階のカフェには休むって伝えたから」
「えっ早っ」

 そこまでしてくれるのか。と驚きながら彼の真剣な目に引き込まれるようにして、目線を合わせた。

「失礼します。あっ藤堂先生もいましたか」
「速水先生、お疲れ様です」

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