彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「わかりました。私が責任を持って対処いたします」

ホテルスタッフの表情に安堵の色が見えた。

「荷物、預かってもらっていいですか?」

「もちろんです。お帰りになられましたらお声かけください」

「ありがとうございます」

ホテルを出ると廣藤自動車でもトップクラスのセダンが横付けされていた。 
運転手がドアを開ける。
俺も一緒に乗り込んだ。とりあえず彼女を病院に連れて行き、検査をさせよう。

運転手にベリが丘総合病院まで行くよう指示し、彼女を支え受付に向かった。俺は結局、検査結果を確認するまで病院を出ることができなかった。

検査の結果、貧血以外異常は見られないようだ。

ようやく帰れる。いったい今何時だよ!
時間を確認しようとスマホを取り出しハッとした。
仕事を終えた時、充電が切れているのに気がつき、ジムで汗を流している間に充電しようと思っていたのをすっかり忘れていた。

俺は病院を出ると、マンションまで一気に走った。
ホテルに預けた荷物は後で取りに行けばいい。


玄関扉を開け、「美音!」叫ぶように呼んだ。
返事がない。もう帰っていてもおかしくない時間なのに、部屋は暗く靴もない。

一通り部屋を見て回ったが、美音はどこにもいなかった。
とりあえず充電して電話してみよう。
急いで充電し電源を入れると、美音から何度も着信が入っていた。メッセージもある。

『お疲れさまです。今仕事ですか?』

時刻を確認すると、俺がちょうどホテルのジムにいる時間帯だった。
着信時刻は廣藤愛莉の検査で病院にいる頃だ。

スマホに表示されている時間は既に20時をまわっている。買い物にでも出掛けているのだろうか。
美音の番号に発信したが繋がらない。
もしかして、沙織と出かけているのか?いや、沙織はカナダに長期出張中だ。だが、早めに帰国して美音を独り占めしている可能性がある。
とりあえず、沙織にも電話してみることにした。

「もしもし」

声のトーンからしてかなり機嫌が悪い。

「あんた、ここ日本じゃないのよ。いったい何時だと思ってんの」

「悪い何でもない」

「はぁ?」

沙織はまだカナダか。一緒にいるはずはないよなな。
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