彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「桃園さん、これがリストアップした曲よ。ここをロビーラウンジだと思って、この中から何曲か弾いてくれないかしら」

差し出されたタブレットを受け取り目を通した。

クリスマスにちなんだ曲が多数を占める中、古い映画の挿入曲もリストアップされていた。幸い、母がよく弾いていた曲で馴染みもある。

『White Christmas / Moon River / When You Wish upon a Star(星に願いを)』

私はこの3曲を組み立てて演奏することにした。私の大好きな曲だからだ。楽譜もいらない。母の演奏が私の脳裏には焼きついている。母の足元にも及ばないだろうが、私なりの曲を奏でよう。 

ピアノ椅子に腰掛け、軽く音を確かめてみた。音に全く濁りがない。他のピアノでは感じてしまう音に混じる僅かな濁りが完全に排除されている。そして、繊細でクリアな高音、力強く温かみのある低音。
さすがは最高峰のグランドピアノだ。

「高椿さん、パーティーに参加される方の年齢層や、男女の比率はどのような感じでしょうか?」

「20代前半から70代後半まで、男女同伴が殆どよ」

「わかりました」

フォーマル衣装に身を包み、ロビーラウンジに集う参加者をイメージする。

私は呼吸を整え、鍵盤を弾いた。
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