彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
3曲を弾き終え、静かに指を下ろす。
「どうでしょうか?」
問いかけながら、やや斜め後ろに控えていた高椿さんの方を振り返った。
あれ?返事がない。
もしかして、意に沿わない演奏だったのだろうか。
自分なりに気持ちを込めて弾いたんだけど……
「あ、あのぅ……」
高椿さんの顔を覗き込むように見やると、目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「高、椿さん?」
彼女はハッとしたように、私の顔に視線を向けた。そして傍に寄り私の目を見据えた。
「私の想像を遥かに超えていたわ。私がずっと聴きたかった音色だった。ねぇ、桃園さん、ラウンジピアニストの経験があるの?」
「いいえ」
「ピアノ教室や音大以外で誰かにピアノを教わった?貴女はいったい何者?」
「何者?と言われましても…… ピアニストを諦めた平凡な社会人です」
「諦めた?」
「突発性難聴を発症してしまって」
「そうだったの⁉︎ 今、症状は?」
「大丈夫です」
「そう……よかった。ごめんなさいね、事情も知らず、強引だったわよね」
「いいえ、私も、このような素敵な場所で、しかも、こんな素晴らしいピアノで演奏することができてとても光栄です。きっと母も褒めてくれるのではないかと思います」
「お母様?」
「はい、母はラウンジピアニストで、こちらのホテルの専属ピアニストでした」
「もしかして、お母様の名前は矢吹玲子さん?」
「はい、矢吹は母の旧姓です。矢吹のまま仕事をしていました」
「そう、だったのね…… まさかこんな形で聴くことが出来るなんて……」
高椿さんが私の手を両手で包み込む。
「私は、矢吹玲子さんのピアノが大好きだった。彼女の紡ぎ出す音色が、私たちの心を癒してくれていたのよ。もう、聴くことは叶わないのかもしれないって思っていたけど、しっかりと貴女に受け継がれていたのね。私は幸せ者だわ」
「そのように言っていただけて、とても嬉しいです。きっと母も喜びます」
「どうでしょうか?」
問いかけながら、やや斜め後ろに控えていた高椿さんの方を振り返った。
あれ?返事がない。
もしかして、意に沿わない演奏だったのだろうか。
自分なりに気持ちを込めて弾いたんだけど……
「あ、あのぅ……」
高椿さんの顔を覗き込むように見やると、目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「高、椿さん?」
彼女はハッとしたように、私の顔に視線を向けた。そして傍に寄り私の目を見据えた。
「私の想像を遥かに超えていたわ。私がずっと聴きたかった音色だった。ねぇ、桃園さん、ラウンジピアニストの経験があるの?」
「いいえ」
「ピアノ教室や音大以外で誰かにピアノを教わった?貴女はいったい何者?」
「何者?と言われましても…… ピアニストを諦めた平凡な社会人です」
「諦めた?」
「突発性難聴を発症してしまって」
「そうだったの⁉︎ 今、症状は?」
「大丈夫です」
「そう……よかった。ごめんなさいね、事情も知らず、強引だったわよね」
「いいえ、私も、このような素敵な場所で、しかも、こんな素晴らしいピアノで演奏することができてとても光栄です。きっと母も褒めてくれるのではないかと思います」
「お母様?」
「はい、母はラウンジピアニストで、こちらのホテルの専属ピアニストでした」
「もしかして、お母様の名前は矢吹玲子さん?」
「はい、矢吹は母の旧姓です。矢吹のまま仕事をしていました」
「そう、だったのね…… まさかこんな形で聴くことが出来るなんて……」
高椿さんが私の手を両手で包み込む。
「私は、矢吹玲子さんのピアノが大好きだった。彼女の紡ぎ出す音色が、私たちの心を癒してくれていたのよ。もう、聴くことは叶わないのかもしれないって思っていたけど、しっかりと貴女に受け継がれていたのね。私は幸せ者だわ」
「そのように言っていただけて、とても嬉しいです。きっと母も喜びます」