彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「桃園さん、体調はどう?」

「とても元気です。症状もずっと出ていません」

「それは良かった。安心しました」

「あのぅ……季織先生は沙織さんのお姉様だったのですね。高椿さんではなく神崎さんということは……」

「高椿は私の旧姓よ。結婚して神崎になったの。脳外科に神崎淳也という医師がいるんだけど、私の夫よ」

「そうだったのですね!神崎淳也先生の名前は存じておりましたが、ご夫婦だっとは……てっきり同姓のお医者さまかと思っていました」

「脳外科に用がない限り、なかなか関わる機会はないものね」

「お義兄様は凄腕の脳外科医なのよ。学生時代は新聞配達のアルバイトで生計を立てながら勉学に励み、首席で卒業したの。お姉様は次席だから夫婦でツートップ。お義兄様はお姉様にベタ惚れなのよ、それにお姉様も」

嬉しそうに話す沙織さんの言葉を遮るように、季織先生が咳払いをした。

「沙織、もういいから」

「えぇぇぇっ、ケチ」

「ケチって何よ」

「ところでお姉様、今日はどうなさったの?何か用事でもあったのかしら?」

「そうそう、服を取りに来たのよ」

「服?」

「シュンスケが子供の頃に着ていたフォーマルスーツ。明日のパーティー、ユウヤに着せようと思って。あの子、子供の頃のシュンスケに体型がそっくりだから」

「仕立てなかったの?」

「すぐ大きくなるのにもったいないでしょう」

「さすがお姉様。お金は湧いてくるわけじゃないのよ!って、私、何度も叱られていたのを思い出したわ」

つい先ほどドレスを買ってもらったばかりの私は、心苦しさが激増してしまった。
< 53 / 151 >

この作品をシェア

pagetop