彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「美音ちゃん? 随分親しい呼び方だけど、あなたたち、いつから知り合いなの?」

「数時間前よ」  

「数時間前⁉︎」

「私、ずっと妹が欲しかったから、妹になってってお願いしたの」

「はい? 話が怪奇すぎてよくわからないんだけど」

『ですよね』と、私も心の中で何度も頷いている。

「まぁ、確かに、あなたは昔から妹が欲しいって言っていたものね。その一番の被害者はシュンスケだけど」

「あのぅ……すみません、先ほどからお話に登場するシュンスケさんというのは、弟さんでいらっしゃいますか?」

「えぇ、そうよ。シュンは俊敏の俊、スケは、にんべんに右で、俊佑。高椿俊佑。沙織が妹化させようとした高椿家の末っ子」

「妹化、ですか……」

「迷惑な話よね」 

「迷惑なんて人聞きの悪いこと言わないでくれるかしら」

「事実だから仕方ないでしょう。逃げる俊佑を追いかけ回してワンピースを着させようとするんだから」

「結局着てはくれなかったけど」

「当たり前でしょ!着てくれると思える方が驚きよ」

「シュンスケは照れ屋さんなのよ」

沙織さんという人は、どうやら個性豊か過ぎる人物らしい。

「どうしてその思考に至るのか謎だわ。そんなに妹が欲しいのなら、俊佑にはやく結婚してもらわなきゃね」

「そうなのよ!私もそう思って、美音ちゃんに俊佑とお見合いしてみない?って提案したの」

「あら、それはいい提案ね」

「でしょ!」

「うふふっ、だからね、聞いてちょうだいよお姉様。俊佑、今日帰って来るって言っていたでしょう。美音ちゃんをうちに連れてくれば、バッティングするんじゃないかと考えたわけ」

「ははぁ〜ん、そういうこと」

季織先生の謎めいた含み笑いと、沙織さんの屈託のない笑みに、ただならぬ予感を覚えてしまった。

「どう?美音ちゃん、俊佑はおすすめよ」

「そうね、私もおすすめだと思うわ」

いやいやいや、おすすめよって言われても……
どうすればいいのだろう。
本人意思不在のまま、外堀が埋められようとしている。
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