彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「俊佑、もしかして知り合いなの?」

「あぁ、彼女は覚えていないだろうけど」

「好きなのね。俊佑のそんな表情初めて見たわ」

「俺、どんな表情してんだ?」

「愛しさをいっぱい詰め込んだような表情、かしら」

「そんな顔してんだ」

「えぇ」

「初恋、なんだ」

「そう……気持ち伝えないの?」

俺はゆっくりとかぶりを振った。

「何も伝えずに発つつもり?」

「そりやぁ、そばにいて、話を聞いてやりたい。でもそれは、俺の役目ではないかもしれないだろ?」

「そういう人がいるかもってことかしら?恋人とか。こんなに可愛らしい女性だもの、いてもおかしくはないわね」

「そうだよな……」

自分から言い出しておいて、かなりのダメージを受けてしまった。

俺は、子どもの頃の彼女しか知らない。
それが現状だ。

「俺、もう行くよ。このままだと感情をコントロールできなくなる」

「わかったわ。でも、目覚めた彼女は訊くでしょうね。どうしてここにいるのかって」

「その時は俺のことは話さず、上手く言っといて」

「どうして?彼女の心には確実にあなたの存在が生まれるのよ」

「弱っている彼女につけ入ることはしたくないから」

「恥ずかしいってのもあるんでしょう」

笑って見せたが、それが作り笑いだということを、きっと季織はわかっているのだろう。


「ホント、シャイなんだから。俊佑ではなくシャイの佑ね」

「なんだよそれ」

「彼女のことはちゃんと私が見てるから安心なさい」

「じゃあ、頼んだよ」

俺は、包み込むようにそっと彼女の頬に触れた。

『美音、君が好きだ。傍にいて君を守りたい』

声にできない自分の気持ちを彼女に送った。
届くことのない俺の想いだ。
その想いを胸に閉じ込めたまま、俺はアメリカに渡った。
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