彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
ニューヨクに到着し、マンハッタンのホテルで一息ついていると季織から着信があった。彼女の容体についての報告だ。どうやら大事には至っていないようで胸をなで下ろした。

「やっぱり訊かれたわよ」

「え?」

「どうやってここまで来たのか、誰かが助けてくれたのだろうけど、覚えていないからお礼が伝えられないって」

「なんて答えたの?」

「運んでくれた人はいるけど、もう空の上だから私が伝えておくって。彼女、恩返ししたいくらいだって言っていたわよ」

「そうなんだ、恩返しか…… ありがとう、姉さん」

「どういたしまして」

季織はその後も事あるごとに連絡をくれた。

今日は検査に来ていたわよ、まだ少し目眩はあるみたい。
今日は診察に来ていたわよ、調子はいいみたい。
今日は姿を見かけたけど、話ができなくて残念だったわ。
今日は定期検査だったみたいよ。問題なかったみたい。就職も決まったんですって。永峰電気工事店らしいわよ。
今日は定期検診。顔色が凄く良かったわ。有意義な情報をゲットしたわよ。なんと、彼氏いないんですって!

季織からの連絡という名の報告は、俺にとってサプリみたいなものだった。
そのサプリを受け取った俺は、より高度なスキルを身につけるため、心臓血管外科のパイオニアである医師のもと、臨床経験を積んだ。

冠動脈バイパス術に加え、より小さな傷で手術を行う低侵襲冠動脈バイパス術のスキルも上げた。
これで、心臓を患う一人一人に対して、よりベストな治療法を選択できるようになる。
不思議なもので、執刀後に湧き上がる肉欲も次第に治まっていった。
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