彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
俺の家に彼女がいる!

昂る気持ちを抑え、病院まで迎えにきた高椿家の車で自宅に戻ったが、

「もうお帰りになられましたよ」

待っていたのは、モブ子さんの笑顔と、言葉という容赦ないアッパーカットだった。

「え……」

まるで、寒冷地に一人取り残されてしまったような気分だ。
心が寒い。何故こんなにも寒いのか。
あぁそうか、俺は想像以上に彼女との再会を楽しみにしていたらしい。

しばらくソファーにもたれかかり放心状態だったが、とりあえずシャワーを浴び、リビングで沙織の帰りを待つことにした。長距離移動の疲れが出たのか、ソファーでうつらうつらしていると、

「俊佑ーーーっ!」

沙織の声が廊下に響き渡り、勢いよくリビングのドアが開いた。

「遅ーーーーーーいっ!」

ズカズカと目の前にやって来て、仁王立ちし俺を見下ろした。

「な、何だよ」

「遅いっ!」

「は?」

「せっかく運命の女性と会えるチャンスだったのに!」

「運命?」

「そう、運命。聞いたわよ、あなた、美音ちゃんを助けたんでしょ」

「まぁ、そうだね」

「美音ちゃんはとっても可愛い女性(ひと)よ」

俺の横に腰掛け、顔を覗き込んできた。

「近いよ」 

余計に顔を近づけてくる。

「なぁ、沙織は彼女のどこに惚れたわけ?」

「全部よ」

「奇遇だな」

「え?」

「俺もだ」

「・・・ えぇぇぇぇぇっ!」

「悪いけど、俺、彼女に惚れたの20年前だから」

「ちょっ、ちょっと、どういう・・・えっ?」

視線が四方八方飛び交っている。

「20年前って、20年前でしょ?20年……」

俺は彼女の出会いから現在に至るまで、全てを沙織に告白した。
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