彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「なによ!やっぱり運命じゃない!ねぇ、俊佑」

「ん?」

「もう無理やり恋人、いいえ、婚約者にしちゃいなさい」

「はぁ? 彼女の意思を無視してそんなことできるわけないだろう。だいたい、彼女は俺のこと知らないんだぞ」

「それなら大丈夫」

「どこが大丈夫なんだよ」

「美音ちゃんの心の中にはもうしっかりと俊佑がいるはずよ。私が一生懸命推しておいたから」

「一生懸命推したって……」

「今頃美音ちゃんは、俊佑のことが気になって気になって仕方ないかも」

「いったい何を吹き込んだのやら」

「そういえば、明日、廣藤愛莉来るわよ。国民的若手女優とか何とか言われている。彼女、廣藤会長の孫なのよ。お父様やお祖父様に愛想振り撒くつもりなんでしょう。もしあなたと顔を合わせたら、きっとあの人にロックオンされるわよ。まぁ、私の弟は靡かないと思うけど」

「俺、その人との見合い話があったけど断ったから」

「はい? お見合い?」

「向こうで彼女を助けたことがあったんだけど、その後、廣藤会長から見合いを申し込まれたって父さんから電話があったんだよ。俺、心に決めた女性(ひと)がいる。彼女以外考えられない。俺の人生をかけて守りたいのは彼女だけだから断ってくれって」

「えっ⁉︎ 何それ⁉︎ 初耳よ!」

「断ったから父さんも沙織には話さなかったんじゃないか?」

「ねぇ、その心に決めた女性って、もちろん美音ちゃんよね?」

「あぁ、そうだよ」

「よく言ったわ。やるじゃない!さすが私の可愛い弟。でも、安心するのは早いわ。断られているのに明日来るってことは、諦めてないってことだもの。自分を売り込む絶好の機会でしょ。彼女外面は完璧だものね」

「なんかあった?彼女と」

「別に何もないわ。でも私わかってしまうのよ。裏表のある人」

「彼女がそうなのか?」

「そうね。一度仕事関係のパーティーで一緒になった時にそう感じただけ」

「そうか」

昔から沙織の看破する力は優れていた。沙織がそう感じたのなら総じて間違いではないのだろう。
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