陽之木くんは、いつもそうだ。
「っ、」

 胸の下あたりにズシリ、重たい何かが巣をつくり始めた。
 息が詰まって苦しい。
 陽之木くんの訃報を聞いた時、〝やばい〟と思って咄嗟に塞いだ穴から何かが溢れ出して、警報を鳴らしているようだった。

 私は考えようとする脳にストップをかけて、それをごまかすように絵本の最後のページをめくった。
 そのページのハリーはすぐに見つかった。
 ここ、と言わんばかりのマスキングテープが貼られていたからだ。
 余計なことを……と思った次の瞬間、心臓がヒヤリ、冷たくなった。
 マスキングテープには手書きの文字でこう書かれていた。

【初デートの場所に集合!】

 それは、紛れもなく陽之木くんの字だった。

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