Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
爽やかな、ちょっと高めのテノール。
何気なく視線を上げた先にいたのは、スーツ姿の茶髪の男性だった。
身長はクロードさんと同じくらいだろうか。
優し気に垂れたバンビ目やふっくら柔らかそうな唇、男性にしておくのはもったいないほどの美白肌……アイドルも顔負けの華やかな面立ちに一瞬見惚れ――ハッとした。
「まっ学くんっ!?」
うわ、本人だ!
背が高く、大人っぽくなって印象が変わってるとはいえ、間違いない。
香ちゃんのお兄さん、藤堂学!
びっくりして思わず立ち上がろうとしてしまい、「イタッ」と車椅子に倒れ込む。
「大丈夫かい? 一体どうしたの、その足は」
包帯を巻いた私の足首に気づいた学くんは、と向かい側の席へ腰を下ろしながら聞く。
「あー……あはは、ちょっとグキッてやっちゃって。捻挫だって」
「捻挫!? 可哀そうに。歩けないくらい痛いの?」
「ううん、全然歩けるよ。車椅子は病院の人が念のためにって貸してくれて。それより、お帰りなさい、だよね。15年ぶりかな?」
私が笑顔を向けると、学くんも応えるように微笑んだ。
「そうだね。君は引っ越しちゃってそれ以降会ってないから……やっぱり15年ぶりだ。綺麗になったね、茉莉ちゃん」
懐かしいな、学くんに“茉莉ちゃん”って呼ばれるの。
そう言う風に呼ぶのは彼だけだったから。
「そんなお世辞言っても何も出ませんよーだ」
「本心なのになぁ」
学くんは楽しそうにくすくす笑って、そしてその表情をふと改めた。
「元気そうで、よかったよ」