Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

それにしても、捻挫だけで済んで本当によかった、とランチのピークを過ぎてガランとした食堂を見渡しながら考える。

課長、どうしてあんなことしたのかな。
私、何か恨まれるようなことをした……?

口を塞がれた時の圧迫感、息苦しさを思い出し、改めてゾクリとした。

あの息苦しさには、覚えがある。

15年前の火事――お父さんが亡くなった、あの夜の火事。
あの時私は2階の自分の部屋にいた。
火元は1階だったから外へ逃げることもできず、充満していく煙になすすべなく震えていたっけ。


――助けて、誰か。助けて!

――死にたくない。お願い、誰か……!!


呼吸できない苦しさが、記憶の中で重なったんだろうか。
あの光景をまた思い出すなんて……

ため息をつき、忌まわしいものを振るい落とすようにかぶりを振ろうとして、ふいに「あれ」とつぶやきが漏れた。

感じたのは、違和感だった。

一つだけ異質な、パズルのピース。
それを、どこかに見つけたように感じたのだ。

何かが、おかしいと。
火事の記憶を巻き戻した時に……

何だっけ? 何がおかしい?
どうしてそんな風に感じたんだろう?

わからない。
わからない、一体何が――


「茉莉ちゃん?」


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