Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
やっぱり気のせいじゃない。
前より彼の笑顔が増えてる気がする。
もうこれって、セックスレスであることを除けば、ごく普通の夫婦と大差ないレベルでは?
胸の中で独り言ち、その幸福感にジタバタ悶えていると、
「ふはっ、ちょっと緊張がほぐれたな」
隣から、リラックスした声が言った。
「へ? 緊張? え、なんで?」
「なんでって……当たり前だろう。茉莉花の夫として、おばあ様に、――それからもちろんお義父さんやお義母さんにも、認めてもらえるかって」
片手の拳を口元に当てた彼の、視線が揺れている。
ほんとに緊張してるらしいその表情は新鮮で、かなり驚いてしまった。
「全然大丈夫ですよっ?」
スーパーマンみたいに完璧な人だと思ってたから、ちょっと嬉しい。人間味が感じられて。
「昨夜も電話で、おばあちゃんすごいハイテンションで楽しみだって言ってましたもん。心配ありません。お父さんは……もし生きてたら、大喜びでとっておきのダジャレを披露したと思います」
「ははっ、お義父さんのダジャレか。聞いてみたかったな」
「えー聞きたいですか? ほんと、凍えそうになるくらいベタに寒いヤツですよ。『今日はモナカ、もうなかったよ』とか、『お金が消えた。おっかねー』とか」
調子に乗って何気なく口にしたら――一瞬の沈黙、からの「ぶはっ」って大爆笑。
えぇえええ?
(信じられないことに)相当ウケてくれたらしく、その後も口元を片手で覆って、長い間肩をぷるぷる震わせていた。
この程度でツボるとは……実は笑いの沸点かなり低いんじゃ?
お父さんて、自分のギャグで笑ってくれる人はもれなくいい人認定してたから、大感激しちゃっただろうな。
2人、めちゃくちゃ仲良くなってたかも。
帰省なんかしたら、私よりクロードさんの方を引き留めたりして……とそこまで考えて、それが実現しようのない未来であることを思い出した私は、こっそり窓の外へ視線を向け、やるせない吐息をついたのだった。