Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「あ、そこの畑を右に、その先に続いてる生垣の家がそうです。中に入って、空いてるスペースに停めてください。はい、そこでOKです」
都心から1時間とは思えないほど田畑が広がった長閑なその場所で、おばあちゃんは昔ながらの木造平屋の一軒家に一人で暮らしている。
「へぇ、随分大きな家だな。庭も広い」
「東京を基準に考えちゃダメですよ。田舎なら、これくらい普通です」
車が停まると、待ち構えていたように玄関がカラカラと勢いよく横に開き、紫のセーターにデニムという60代とは思えない若々しい上下を着た小柄な女性が現れた。
私はクロードさんが開けてくれるのも待たず、自分でドアを開けて車を降りた。
「おばあちゃん!」
「まーちゃん!」
駆け寄るなり、以前より白髪に近づいた気がするグレーヘアのおばあちゃんをギュッとハグする。
また少し背が小さくなったかも? と過ぎた時間を実感して、ちょっとしんみりしながら。
「ほらしっかり顔を見せてちょうだい、あらぁ綺麗になって!」
それでも、笑いジワが目立つ程度で肌のハリもよさそう。
元気そうでよかった。
「捻挫したって言ってたけど、大丈夫なの?」
「うん、もう全然」
私が振って見せた足を「あぁよかった」と笑顔で見下ろしてから、おばあちゃんは近づいてくるクロードさんへと視線を向けた。
「おばあ様、初めまして。クロード・ベッカーと申します。直接のご挨拶が遅くなり、大変申し訳ありませんでした」
「まぁまぁあああ……どうも、茉莉花の祖母の足立美津江でございます。まーちゃん、旦那様イケメンねぇ!」
背も高いわぁ、画面越しより100倍は素敵、と手放しのべた褒め。そう、おばあちゃんは無類の面食いなのだ。
一方のクロードさんは、容姿を褒められることなんて慣れているだろうに、今日は勝手が違うんだろうか。ちょっと困った様に「ありがとうございます」と苦笑いしながら手を差し出す。
そして、和やかな雰囲気の中で2人は握手を交わした。