Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「ところで、これの中身は骨壺ってヤツだろう? 墓は作らなかったのか?」

日当たりのいい和室の片隅に置かれた、ちゃぶ台と呼んでいいくらいの小さなテーブル上、2人の遺影の前に収納袋に入れた骨壺が2つ、置かれている。

それを視線で指した彼に聞かれて、私はそうだと頷いた。
両親の墓はない。
仏壇もなくて、このシンプルな供養台だけだ。

「“手元供養”っていうんだそうです。15年前父が亡くなった時、母がそうしようって決めて」

お父さんの地元は遠すぎたし、そもそも父方の祖父母はもう亡くなっていたため、お墓は最初、この実家近くでと考えていたそうだ。

「晴美……あぁ、まーちゃんの母親ですけどね、あの子には言ったのよ、『足立のお墓に入ってもらえばいいよ』って」

隣の台所から、おばあちゃんの声がする。

「ところがねぇ、『犯人が逮捕されるまでは、一緒にいる』って晴美が聞かなくて。まぁとうとう、犯人が捕まる前に、あの子の方が逝ってしまいましたけどね」

寂しそうな口調に気づいたのか、クロードさんも「そうなんですか……」と声を落とした。
「それで、お母さんも一緒にその、手元供養に?」

「はい。でもこの先犯人が逮捕されたら、その時は海に散骨しようって、柊馬と決めてるんです」

「ご両親、海が好きだったのか?」

私は首を振る。
特にアウトドアが好きな人だったわけじゃない。

「父はとても忙しい人だったので、旅行とか全然行けなくて。口癖みたいに言ってたんです、『老後は絶対、お母さんと旅三昧するぞ』って」

足袋(たび)履いてな”、というアホな一言が続くが、これは完全に蛇足なので省略する。

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