Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
絶句してしまった。
とっさに返す言葉が見つからなくて。
富田譲治。その名前、クロードさんに教えたことあったっけ?
私の疑問が伝わったのか、少し気まずそうに漆黒の瞳が泳ぐ。
「すまない。自分で調べてみたんだ。事件のこと」
「……そう、ですか」
そりゃ気になるよね。
私からは、大まかなことしか説明してないもの。
今はインターネットで簡単に情報を受け取れる時代だし、使わない手はない。
私だって、同じ立場だったら真っ先に検索するだろう。
もしかして、聞きたいのをずっと我慢させてたのかな。
なんか申し訳ない。私から話すべきだったのに……
そのまま黙り込むと何か誤解したのか、「悪かった」と後悔したように彼は眉を下げてしまった。
「いきなり不躾だったよな。すまない」
「いえっ、大丈夫です」
話すのは、構わないんだ。
ただ、マスコミ報道以上のことをそれほど話せるわけじゃない。
事件前後のことは、自分でも未だに記憶の曖昧な部分がかなりあるから。
救急車やパトカーのサイレンを聞くだけで過呼吸になった入院中のこととか、聞いても楽しくないだろうし……。
改めて思い返すと、よくあの暗黒の日々を乗り越えられたな、と自分でも思う。
――茉莉ちゃん。
――君が笑ってくれたら、僕も嬉しいよ。
……おっと、ダメダメ。
クロードさんはきっと、学くんの話なんて聞きたくないはず。
うっかり思い出に浸りそうになった自分を戒めてから、彼へと笑みを向けた。
「友達と犯人像について議論したこともあるんです。だから気にしないでください。ええと、富田が犯人だと思うか、ですよね」