Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

車から取って来たコートやマフラーでしっかり防寒対策した私たちは、おばあちゃんに声をかけてから、外へ出た。

「ここ、昔本屋さんがあったんです。お気に入りの雑誌の発売日は欠かさず通ってて――」

行き当たりばったりに歩いて思い出を披露する一方で、頭の中ではこの後どう切り出すべきかとそのことばかり考えていて、どうしても上の空になってしまう。

そんな空気をくみ取って、無理に会話を弾ませることなく、ゆっくりめの歩調に合わせてくれるのがありがたかった。

やがて私たちは、小高い丘の上へたどり着く。

「ここですここ! この公園で柊馬と学校帰りによく遊んだんです」

ブランコと鉄棒があるだけの小さな公園。
天気がいいとはいえやっぱり真冬、閑散としているそこへ、クロードさんを案内する。

新しい学校に友達がいないわけじゃなかったけど、事件のことを詮索されたり同情されたりするのが嫌で、親しく関わった記憶はなくて。
学校が終わると、私と柊馬はいつもここへ来て時間をつぶしていた。

「といっても、大抵はこの隅のベンチに座って本を読んだり、ぼーっとしてただけですけど」

「へぇ、いい眺めだな。かなり遠くまで一望できる」

ハンカチを出そうとするより早く、クロードさんは構わずベンチに腰を下ろしてしまったので、私もそれに倣って隣へ座った。

氷のように凍てついた風が、むき出しの頬を撫でていく。
マフラーへ顔の大部分を埋めながら、眼下に広がる田畑へ目をやった。

そうして、同じようにこの景色を眺めた昔の時間へ思いを馳せる。

あの頃は、毎日のようにパパに会いたいってここで柊馬が泣いてて。
私だって泣きたいのに、って思いをぐっと我慢して、一生懸命慰めてたっけ……。


クロードさんは、催促も何もしない。
ただ黙ってそのモデルのように長い足を組み、寛いだ視線を前へやる。

言っても言わなくても、どちらでもいいんだと。
好きにしていいんだと言われているようで、ほんの少し気分が楽になった。



私は、おもむろに大きく息を吸って吐く。

それから、とうとう重たい口を開いた。


「……私、見たんです。あの夜、犯人のこと」

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