Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
<総帥が来日すると聞いて、一気に参加者が増えたらしいな>
<あぁ、ヨーロッパの方からもわざわざ来てるらしい。みんな必死だな>
<ま、最近総帥はめったにシンガポールの私邸から出てこないから、ここで顔を覚えてもらおうと躍起になってんだろ>
黒子に徹してグラスを渡したり回収したりしていると、いろんな会話が耳に入ってくる。
なんとなく面白くて聞き流しているうちに――ふと、日本語が耳を掠めた。
「ねえあなた、あそこに来てるのリーズメディカルの社長じゃない? ご挨拶した方がいいんじゃないかしら」
「おお、畑中栄吉社長か。グループ内部でも重鎮らしいし、パイプを通しておくのも悪くないな。行ってみるか」
リーズメディカル……?
ピタリと足が止まった。
その名前に、聞き覚えがあるような気がしたから。
あれ、どこでだっけ。最近じゃない。たぶん結構昔の……
リーズメディカル……リーズメディカル……
会話をしていた男女が向かっていく先へ視線を移動させると、数人の中年男性が真面目そうな顔で話し込んでいる。
奥の、一番年上そうな人が社長さんぽい。
んー……特に見覚えのある顔ではないな。
やっぱりカン違いか、と思うのに、なんとなく気になる。
名前からして、リーズグループ系列。きっと医療関係の会社よね。
医療機器? 病院? 医薬品……
唐突に、バチバチッと頭の中で記憶が繋がる。
思わず「あっ」と声が漏れたその瞬間。
入口の方から、どよめきが沸いた。