Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「彼が各務蔵人。当時15歳だった少年ですが不登校気味だったそうで、ふらりとやってきて繁華街で過ごすことが多く、富田ともそこで知り合ったようです。それで今、彼にコンタクトを取ろうとしているんですが――宮原さん、宮原さん? 大丈夫ですか?」
「っえ、?」
「大丈夫ですか? お顔が真っ青ですよ?」
刑事2人に見つめられて、訳もなく身体が強張る。
「え、あ、あのっ……ちょっと、いろいろ情報が多すぎて、パニックになってるのかも。すみません」
愛想笑いで誤魔化すと、彼らは同情するように頷いた。
「それであの、各務蔵人とは連絡が取れないんですね?」
「はい。両親が離婚して一家離散、のような形になったみたいで、今家族も含めて行方を追っているところです」
一家離散……?
「では今日はこちらで失礼いたしますが、何か思い出されたらご連絡いただけますか?」
「はっはい、もちろんです」
千々に乱れていく思考をかき集めて、かろうじて首を縦にする。
エントランスまで彼らを見送り、ロボットのようにぎこちないお辞儀をして、コンシェルジュにお礼を言い、高速エレベーターまでたどり着く。
そしてエレベーターのドアが閉まるや否や、ぐちゃぐちゃに混乱した頭を壁に強く押しつけて、乱れる呼吸を必死に整えた。
どうしよう……どうしよう……?
刑事さんたちは知らない。
言うべきだった?
言うべきだったの?
各務蔵人は、ここにいる、と。