Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
どくん、どくん、どくん、どくん……
鼓動が、さっきより激しく、不規則に暴走していく。
冷や汗が吹き出して、くらりと眩暈がした。
今にも皮膚を突き破って飛び出しそうな心臓を洋服の上から押さえて、懸命に記憶を手繰り寄せる。
“blue moon”を飲んだ夜だった、クロードさんに声をかけられたのは。
Once in a blue moon――あのイデオムそのままの、奇跡のような出会い。
たまたまその後も顔を合わせる機会が続いて、東京観光に付き合ってほしいって頼まれて。
彼に惹かれ始める自分を自覚した頃、プロポーズ。
柊馬の学費も、全部肩代わりしてくれて。
住む場所はタワマンの上階で。
それはもう、夢のようなシンデレラストーリー。
どうして自分が、ってその幸運が怖くなるほどだった。
けれど、もしそのすべてが、blue moonじゃなかったら?
すべてに目的があって、意図的にやったこと、だったら?
意図的に私に近づき、意図的に私と知り合って口説き、意図的にプロポーズして結婚し――
「ははっ何それ、ありえない」
あまりにも荒唐無稽な想像に声を出して笑いかけて。
ふとその表情のまま、硬直する。
帰り際の大塚刑事の言葉を思い出したからだ。
――宮原さん、身辺には十分気を付けてください。15年前の事件、真犯人が他にいるのだとしたら、唯一の目撃者であるあなたのことは常に脅威ですからね。あなたが余計なことを漏らしたりしないよう、すでにどこかから見張っている可能性もあります。
「見張り……?」
汗がひいたのか、今度は寒気がしてきた。