Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
フィクションの中から出てきたんじゃないかってレベルのスパダリ。
自分とはあまりに不釣り合いで、詐欺なんじゃないか、って疑ったほど。
彼は私に、なんでも買ってくれた。
なんでも好きなことをさせてくれた。
いつも真綿でくるむように大事にしてくれて……
ただしその一方で、ついに友達に紹介してくれることはなかったし、自分のこと、特に過去についてはあまり話したがらなかった。
そして、私が外で働くことは嫌がった。
これじゃまるで彼のお人形のようだと、感じたこともあった。
本当に、閉じ込められていたのだとしたら?
そのために、この家を用意したのだとしたら?
鳥かごの中に閉じ込めるように。
そんなことをするということは、つまり、クロードさんが――……
――あなたが余計なことを漏らしたりしないよう、すでにどこかから見張っている……
それだけじゃない。
もしかしたら、富田の事件に関わってる可能性だってある。
――死亡推定時刻は前日、つまり日曜日の深夜。死因は、銃弾による失血死。
2週間前の日曜日は、私の誕生日だった。
レストランで食事中に高橋さんから電話がかかってきて、彼は出ていき、そのまま帰ってこなかった。
深夜、一体どこで何をしていたのか……
ぐ、っと吐き気がこみあげてきて、両手で口元をきつく押さえた。
違う。
違う。
まさか、そんなことがあるはずない。
なんて恐ろしいことを考えるのよ。
クロードさんは、そんなことをする人じゃない。
仕事関係では厳しい面を持ちつつ、実はすごく優しくて、思いやりがあって……
心の中で精いっぱいの反論をしてみたものの、それ以上考え続けることはできず。
一歩二歩とドアから後ずさる。
そしてそのままふらふらと、ドアから離れて廊下を引き返し始めた。
今はただ、一刻も早くここから遠い所へ行きたかった。