Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

自分の子ども時代とは全く違う東京を、ずっとじっくり観光したいと思っていたそう。ただ海外出張も多く忙しい毎日に加えて、一人で出歩くとたちまち女性に逆ナンされてしまうので、なかなか実現しなかったのだとか。

もちろん最初は断わった。
他に適任者がいくらでもいるでしょう、って。

ところが彼は一歩も引かない。
「茉莉花しかいないだろ」って意味不明に断定され、とうとう仕方なくこっちが折れた。下の名前をさりげなく初めて呼ばれて舞い上がってしまい、正常な判断力を欠いていた、のかもしれない。

それから私たちはスカイツリーや新宿東宝ビル、新しくなった歌舞伎座etc.……彼がまだ行ったことのない新しめの観光スポットを選んで、一緒に巡ることになる。

断わっても断っても、お礼だと言って毎回アクセサリーや洋服を買ってくれることには閉口したし、振り回されてる感はハンパなかったものの。
スマートにエスコートされる日々は嫌じゃなかった。
加えて、強引な口調に隠れた彼の優しさやユーモア、ツンデレとも言うべき性格にも気づいていき。
並行して、レアな笑顔に胸が高鳴ることも増え……、いつの間にか次の約束を心待ちにするようになっていた。

もちろんその頃には、彼がなんちゃって(・・・・・・)じゃなく本物のお金持ち(セレブ)だと気づいていたし、平凡なOLの自分とは釣り合わない人だってことも承知していた。

もう会わない方がいい。
ちゃんとそう言わなくちゃ。

本気で彼を好きになってしまう前に。

わかってるくせに、彼から連絡をもらうたびにいそいそスケジュールをチェックしてしまう私は、その時すでに彼に落ちていたんだろうな。

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