Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「初めまして、藤堂学と言います。お元気そうなお顔を見て安心しました。でも骨折では何かと不便ですね。失礼ですが、治療はどのように?」

あぁ、そうだった。
道すがら彼から聞いた話だと、骨折の場合、その部位によって手術と保存治療と2種類から選ぶそう。ただし、高齢者の場合は健康状態によって保存治療一択になる場合もあるとかで……

「私の年なら、まだ手術で大丈夫だと先生から言われましたので、そうするつもりなんですよ。その方が治りも早いからって」

大腿骨の骨折なら十中八九手術になるだろうって学くんが言ってたな。やっぱりその通りだったらしい。

「本当に情けないわ。ちょっと転んだだけなのに、骨が折れちゃうなんてねえ。痛くて痛くて一歩も動けないし、お隣まで距離があるから叫んでも誰にも気づいてもらえないし、このままここで死んじゃうのかと思ったわ」

普段から庭仕事で身体を動かしてて、自分は頑丈だって自負があったんだろうな。痛みで動けなくなって、そりゃ怖かったよね。
肩を落としてしょげ返ってる姿に、胸が痛くなった。

「入院って、どれくらいかかるの?」
「リハビリも含めて、2か月くらいみたいね」

「2か月かぁ。でもそれくらいで元気になれるならよかったじゃない。倒れて救急車で運ばれたって聞いた時は、脳か心臓か、命に関わる病気かもってめちゃくちゃ心配したんだよ?」

私が言うと、「それもそうね」とその表情が少し明るくなった。

「あ、そうそうそれでね、まーちゃんにお願いがあるのよ。家から着替えをね、取ってきてもらえないかしら。他にもいろいろ、入院に必要なものもあるみたいで」

「ん、わかった。ナースさんに必要なもの確認して取ってくるね」

着替えは今日中に必要か。
急いで行けばなんとかなるかな、と腕時計に目をやる。

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