Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
――対外的にもそろそろ身を固めた方がいいことはわかっていたが、知っての通り俺は愛想を振りまけるタイプじゃない。仕事人間で出張も多い。結婚には向かないんだろうなと半ば諦めていた時に茉莉花と出会った。きっと俺たちなら、いいパートナーになれそうな気がしたんだ。
照れているようにも見えるその表情に、私の頬もつられて熱を帯びていく。
まさか、本当に本気? 揶揄われてるんじゃなく?
――…………。
半信半疑のまま視線を上げれば、ブラックダイヤのように美しい瞳に力強く見つめ返された。
――一生不自由させないと約束する。だから俺を選べ。
混乱して何も言えない私の沈黙を迷っていると受け取ったのか、彼の口調がやや強引に、前のめりになる。
いつになく必死っぽい彼の姿を目の当たりにして、胸の内へ温かな何かがひたひたと満ちていくのを感じた。
一体私のどこに気に入るポイントがあったのか全くわからないし、それっぽい甘いムードややり取りも2カ月間全くなかったように思うけど、彼が本気らしいってことは、伝わってきたから。
――参ったな……女の涙は苦手だったはずなのに。
苦笑交じりに言われてようやく、頬が濡れていることに気づいた。
同時に、はっきりと自覚する――どうしようもなく彼に囚われている自分を。
――ご、ごめんなさっ……
立ち上がった彼は長い足であっという間に私の傍らへやってくると、優しい手つきでそっと涙を拭ってくれた。
――謝るな。嬉し涙なんだろ? まぁ、それ以外認めるつもりはないが。
さすがの強気発言に、返事に困って泣き笑い。
――私、で、いいんでしょうか?
――あぁ、茉莉花しかいらない。
壊れ物に触れるようにそっと抱き寄せられて、もう後は涙腺崩壊。
あの時私は、世界で一番幸せな女の子だったと断言できる。