Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
お腹いっぱい食べて飲んで、今日はお祝いだからと奢ってもらった私は、少しふらつきながら店の外へ出た。
週末ということもあって歩道は飲み会帰りの人が行きかい、かなり賑やか。
その喧騒と冬の冷気を火照った頬に心地よく受けつつ、鼻歌交じりにマフラーを巻いていく。
「しっかし兄貴、がっかりするだろうなぁ。せっかく帰国するっていうのに、お気に入りの茉莉花が人妻になってたなんて」
後ろから聞こえた言葉に、ふと手が止まった。
「え、学くんアメリカから帰ってくるのっ?」
ガバッと振り返った私に、レザーコートに腕を通しつつ香ちゃんが頷く。
「年明けから目白の病院で働くんだって。だから今は引っ越しの準備やらなんやらでバッタバタらしいよ」
「そうなんだ」
帰ってくるんだ、学くん……
――茉莉ちゃん。
――君が笑ってくれたら、僕も嬉しいよ。
脳裏を過るのは、絶望のどん底で聞いた彼の言葉。
そして、彼がくれたジャスミンの花……
その芳しい香りを懐かしく思い出していると、知依ちゃんに頬をツンツンつつかれた。
「ダメだよ、茉莉花ちゃん。旦那さんの前でその顔しちゃ。浮気だって疑われちゃうぞ?」